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[這いずり日記] 鹿児島・北薩〜姶良 2009/冬

不景気の厳冬期、二人集まればマイレージが半分で切符が貰えるということなので、日本の範囲のなかで遠出しようと考えた。奄美大島にしようか、鹿児島にしようか最後まで迷ったが、奄美は天候不順の時期であるらしいし、どうせなら他の季節の方がよさそうだから、の来ている鹿児島にした。餌付けの鶴など見たくないと異議を唱える理事を説得し、北薩・姶良五泊六日の温泉、いや自然観察旅行である。
出水の鶴の渡来地に来てみると、確かにそれは不気味なのであった。めでたい色合いとは言え、コウノトリと同じく、ただでさえややクネクネとして気味の悪いところのある鶴どもが、職員の撒く毎日一トンの小麦を目当てに眼下に参集して、吠え、争っている。泥や餌のなかで、白い首がドジョウのようにうねっているのが見える。餌代や田んぼの借り上げ代に毎年八千万円かかると自慢する説明員の無神経もうるさい。ただ、これらの鶴の何種類かが、鶴の保護に尽力した人々のおかげで命脈をつないだのも恐らく確かなことだろう。餌を撒かなければ、渡ってきた鶴は近隣の田畑を覆って、種も苗も食い尽くすに違いない。受け容れ難い現実ではあるけれど、何の代案も持っていないという思いが苦い。夜、共同浴場で地元の年配の人から、鶴は雑食で根こそぎ食べていくから、昔ほんとうに厳しい時は殺したですよ、という話を聞き、気分はますます重く沈んでいくのだった。

そういうことを除けば、確かに熊本も鹿児島も鳥は多くて、自然はまだ多少は力強い。五日で60種類くらいの鳥を見れたし、今年東京で少ないシロハラが溢れていたことも西国らしい。アトリの渦を見ながら、なるほどこれなら東京にまで越冬に流れてくるわけだ、と得心したりして、まぁ、何というか、毎日結構楽しいのであった。理事はもちろん、ヤマセミを見てご機嫌であった。


写真は高城温泉で。鳥はまだ大丈夫だが、ちょっと人間のほうが心配だ。At Taki Hot Spring Village, Kagoshima, Japan.
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