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[更新情報] ギリシャ東部トラキア地方の冬の鳥 その7

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個人的博物館本館を更新しました。今回の対象は、20092月、ギリシャ東部のトラキア地方で撮影した鳥の写真の七回目、エヴロス川河口のデルタ地帯で撮影したもの。We have updated our main museum. Addition includes bird photos taken at Evros Delta, Greece, in Feb 2009.

更新リストは、オオジュリン、コビトウ、セリン、マガン、キアシセグロカモメ、ハシボソカモメ、ミソサザイ、ヘラサギ、ダイゼン、アカアシシギ、ホシムクドリ、オオハクチョウ、ウミアイサ、ミコアイサ、ヒドリガモ。 英語だと European Serin, Reed Bunting, Pygmy Cormorant, Greater White-fronted Goose, Slender-billed Gull, Yellow-legged Gull, Winter Wren, Eurasian Spoonbill, Grey Plover, Common Redshank, Common Starling, Whooper Swan, Red-breasted Merganser, Smew, Eurasian Wigeon。

エヴロス川河口の写真もこれで終わりで、この時のギリシャの鳥の写真はあとはアテネ近郊のものを残すのみとなった。

アレクサンドルポリの空港のことを書いておこう。ここはギリシャはギリシャだが、歴史的にも地政学的にも、たぶん民族的にも複雑な地域なのに加えて、他の地方と違って観光の要素が全くないから、愛想笑いも薄化粧もなくて、むき出しの日常が空港にぬっと顔を出している。

待合室は壮観だ。僕も自然観察帰り、髭ぼうぼう、毛帽子にオリーブ色のワックスジャケット、それに山用のザックという出で立ちだが、これが全く違和感がない濃さがあたりを覆っている。髭と眉がつながったような奴。太った奴。汚い奴。皆が皆黒い髪にくすんだ色の防寒着を着て、ダンボールをたくさん携えた中国人(これはどこにでもいる)を除けば、国籍が全く分からない。トルコでも、ギリシャでも、ブルガリアでも、シリアでも、レバノンでも、何でも通る。

通らないのはゲートで、いわくあり気な人々がそれぞれの事情を抱えて係官と相対するのだから、各駅停車は当たり前、恐ろしく時間がかかる。ただ、誰も(自分を含めて)すんなり通るなんて思っていないから、それぞれの複雑な事情を尊重して、大人しく我慢して、だけどただやり切れなさそうに待つ。この辺は、ちょっとでも滞ると集団的悪意が瘴気のように吹きつけてくる日本とはだいぶん違う。

で、もちろん僕も滞った。ザックの中身を全部広げて、望遠レンズをいちいち反対側から覗きっこするのはまぁ慣れっこだからいいが、パスポートで止まったのには笑った。曰く、ノービザで入国している(EU〜日本はノービザなんです)入国スタンプが押してない(頼んでも押してくれません)イタリアのスタンプが押してある。イタリアから入国したのか(アリタリアに乗ってきました)。結局係官では埒が開かず、電話で上官に電話で報告。係官と世間話をしながら、待つこと十分。制服を着た責任者のおばさんが分厚い規定集を持って現れた。「通ってよろしい」まぁそうだと思ったよ。だいたい国内線じゃないか。

そして荷物係の三十台の男はちょっとビョーキだった。「ここには何しに来たんだい?」「鳥とか見にさ」「ふーん、それは面白いのかい」「まあね」「アレクサンドルポリは楽しかったかい」「結構良かったね」この辺で「では気をつけて」で終われば普通なのだが、この男はこう答えた。
「あんた正気か?」
僕が反射的に
「あんたはそう思ってないのか?」
と尋ね返すと、奴ときたら吃驚するような大声で、
「BOOOOOOOORIIIIIIIIIIIIING !」
と叫んだのだ。そしてシャイニングのポスターのジャックニコルソンみたいな顔をして、ハァ!ハァ!ハァ!と笑った。これにはちょっと驚いた。空港のロビーに男の声がこだましている。だけど、皆、疲れたように見て見ぬふりをしている。

とまぁそんな具合で、ちょっと印象深い空港だった。来て良かったと思った。

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[写真撮影 : 2009/02 - ギリシャ・エヴロスデルタ] [photo data : 02/2009 - Evros Delta, Greece]
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