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[這いずり日記] 佐賀・有明海 2011/初秋

ギリシャでぎりぎりまで粘ったので、一息つく間もなく、家で一泊して今度は西日本で仕事である。仕事は予定通り終わったので、今度は九州に渡って居残った。クレタ島の仇、というわけではないが、前からこの季節に一度行ってみたかった、有明海の干潟。

行きつけない地方に行くと見慣れない地名が多くて新鮮だが、ここも大授とか搦とかエキゾチックな地名が並んでいてすばらしい。工事車両入口という看板のある交差点を曲がり、車で浜に近づいていくと、大きな堤防が見えて、その後にパワーショベルが並んでいるのが実にいやな感じだったが、まぁ浜自体は一応無事。柵があったり、コンクリートで固めた道が縦横に走っていたり、長閑とはほど遠い雰囲気ではあるものの、柵の向こうは広大な干潟であって、ダイゼンをはじめとした鳥も相当数集結しているのが見えた。

満潮時、干潮時、あまり居座ると向こうもこちらも気詰まりだから、適度に気を抜いたり、行ったり帰ったりしながらまる二日、柵にカメラを乗せて観察してみた。正直なところ水鳥の同定は苦手で写真判定が多いが、それでも見慣れない奴、変な奴が混じっていることくらいは分かる。鳥が遠くても、確かに蟹も
ムツゴロウも見ゆるし、気を抜いているとすぐ頭上でチョウゲンボウがホバリングしていたりして、その点でもクレタ島よりはだいぶマシだった。

個人的には、潮が満ちた時、鳥の群れが右に、左に、あるいは渦を巻くように飛ぶ姿をじっくりと堪能できたのが一番良かった。鴫にせよ、千鳥にせよ、飛翔が巧みな鳥たちが、目の前でトリッキーな軌跡を描いて飛んでいくのをみるのは実に爽快で、愉快でもある。テレビの画面を通して大自然を眺めているような、嫌な感覚は常につきまとったが、このコンクリートの塊や、柵のおかげで、辛うじて環境が維持されるのだとすれば、それは甘受せねばなるまい。これ以上妙なことにならぬように、心から願うばかり。


[写真撮影 : 2011/09 - 佐賀市東与賀町] [photo data : Saga City, Japan]
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