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[這いずり日記] 富山・魚津 2012/初夏

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親戚の葬式で旅したのであり、行き帰りに動物の写真を撮影したわけでもないので、ここに記載しようか少々迷ったが、まぁ人間を観察して、人間の写真を撮ったので、おおらかに構えることにした。


91の伯父が死んだのである。そして、87の親父を連れて葬式に出席した。どう書いても親戚の話になるので詳細は省略するが、個人的には二つのハイライトがあった。一つは、87の弟が来ていると聞いて、88の姉が無理をして式場に来たこと。二つ目は、従姉妹を中心として故人の家を訪うたことだった。

88の姉は、弟を見ると駆け寄って(実際には駆け寄っていないと思うがそうしか見えなかった)弟の手を握り、嬉しそうに泣いて「歳をとりなすったなぁ」と一言いい、それから片時も手を放さなかった。一瞬明らかに時間が凝縮し、周りも泣いたり、笑ったりしていたが、この時の姉弟は老人にも子供にも見えて、少々眩しかった。

故人の家は住人も知らない隠し部屋があったとかいう昔ながらの地方の豪邸だ。慇懃無礼みたいな、何だか落ち着かない葬式や火葬を済ませて、皆でこの家に入ると、さっき凝縮したのと同じ時間がここでは地下水のように流れていた。庭はだいぶ荒れているが、中は75年前と同じらしい。風が爽やかに渡って、気分が穏やかに高揚する。葬式の後だけれど、親類が皆冗談を言って笑っている。坊さんがお経を読むと皆自然に座って祈り、終われば菓子を食べてまた笑った。

僕が魚津に来たのは35年、ひょっとしたら40年ぶりだけれど、ずいぶん印象が違った。葬式の葬式らしい部分以外の部分でリアルな葬式の気分を味わって、少し悲しくて、少し愉しくて、心が洗われたようで、こう書くと何だが、よい映画を一本じっくり観たような、そんな心持ちがした。あるいは、新鮮な沢の水に触れたような。

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[写真撮影 : 2012/05 - 富山県魚津市] [photo data : 05/2012 - Uozu, Toyama, Japan]
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