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[這いずり日記] モンゴル中部・南部 2012/夏

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ハワイから戻って家に二泊、今度はモンゴル。10年くらい前からインターネットが世界中に普及し、以前なら想像もつかなかったような旅が比較的簡単に手配できるようになって大変ありがたい。 After returning from Hawaii, we only stayed home 2 nights to leave Japan for Mongolia.

実際に旅行して分かったことだが、モンゴルの旅行ではガイドとドライバー(+車)、特によいドライバーと車の確保がたいへん重要だ。交渉に時間をかけただけあって今回のチームは実に優秀だったのだが、初対面ではあまり愛想のない国民性と相まって少々面食らった。英語が話せなくて腕っ節の強そうな、ちょっと癖のあるドライバーで、挨拶が終わると眼を見据えたまま、ひげ面の人の顔を品定めして「お前の呼び名は今日からチンギスだ」などという。馬でも騎手を馬鹿にすると振り落としたりするが、これは器が測られているのか、などと極東の島国から来たチンギス将軍はいきなり自問自答を迫られるのだった。

ウランバートルはこの国の矛盾と、資源切り売りの好景気と、幸福と不幸と、中国とロシアがごっちゃになって見苦しく燃え上がっているような印象だったが、ひとたび首都を出て少し行けば昔ながらのモンゴルだ。ひろがる草原の中、まともな道もなく、標識などもなく、トヨタの四輪駆動は山を越え、川を渡り、砂漠を踏みしめ、泥沼を泳いですすんでゆく。上空はハゲワシが旋回し、地面では牛馬は言うに及ばず、鼠やリスが多い。土地はあきれるくらい広くて、空がびっくりするほど綺麗。

最初心配した日蒙混合隊四名のチームワークも日に日に馴染んできて、車内はやがて毎日爆笑の渦となった。同じモンゴロイド同士、親戚みたいになんとなく気安い感じがするのも確かだ。まぁ雨も降り、車はスタックしかかり、リヤサスのスプリングも折れ、暑かったり寒かったりしたが、皆で冗談を交わしたりからかいあったりして、二週間半、楽しく毎日を過ごした。移動日となると少なくとも半日はずっと狭い車内にいるのだから、登山と同じで、こういうのが重要だ。いつもの旅と違ってガイドもいるので、疑問に即座に回答が返ってくるのもいい。

自然観察の観点から言うと、南方の国に比べれば種類は尠い。ただ、砂漠、半砂漠、木が生えているところ、寒帯林、草原、岩石帯、それぞれの生育環境ははっきりくっきりと分かれていて、それぞれの環境にそれぞれ対応した動植物が濃厚に分布している。だから、ツルキツツキフクロウ、猛禽類など、通常なかなかお目にかからない大物の観察には良かった。風景写真などこの歳になるともう面倒くさくて普段は全然撮る気がしないが、刺激溢れる風景を前に、今回はポケットのコンパクトカメラの出番がずいぶん多かった。

最終日、空港で皆がさよならを言うタイミングを探していると、愛想のないはずのドライバーまで「チンギスまた来いよな。今度は別なところに行こうぜ」などという。そうだな、このチームならまた行ってもいいな、などとも思う。イベントが多すぎて一言ではまとめられないが、ちょっと懐かしい、よい山行のような旅であった気がする。

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[写真撮影 : 2012/08 - モンゴル・グンガルート自然保護区] [photo data : 08/2012 - Gün-Galuut Nature Reserve, Mongolia]
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