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[這いずり日記] 京都・北山花脊 2013/春

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狩野山雪の展覧会が行われていて、まもなく閉展と知ったので、あわてて京都に行ってきた。それだけでは交通費がもったいないから、ついでに北山で一日。


京都は六年ぶりだが、その時は若冲の展覧会が主目的で、同じような理由で北山で三泊している。二階に厠のある美山のつるや(閉めたらしい)の婆ちゃんに毎日弁当をこさえてもらって、芦生や八丁平に通ったのだった。前回は梅雨時にかかって雨が多かったとは言え、アカショウビンやらジュウイチやら、あまり目にする機会のない鳥や、マムシや、イモリなども観察できて楽しかった記憶があるので、今回は行き先を八丁平の少し隣、花脊の大悲山峰定寺周辺と定めて、峠を越えていった。

山は若葉の季節で、風景は美しいし、寺を過ぎれば歩く人も皆無、舞台装置はすばらしかったが、だが残念なことに最後まで舞台にはほとんど何も登場してこなかった。時々ミソサザイや
オオルリが啼くが、あとは川奥にオシドリが繁殖していたくらいで、野生生物と言う観点から言うと、収穫は皆無とは言えないまでも、まったく乏しい限り。

寺の周囲や川筋以外は北山杉の二次林がほとんどだから、鳥獣の多様性にはさほど期待していなかったのだが、多様性以前にそもそもの数が絶望的に少ない。ならば虫、と軸足を移すが、これもまた悲しい状況で、対象の貧しさに、しまいにはアリやら微小蛾やらばかり撮る。熊注意の看板は多かったが、僕にしてみればなんだか空っぽの山、留守居、という印象だけがのこった。

まぁでもよいのだ。山雪の展覧会など僕が死ぬまでたぶんないのでは、と悲観していたその山雪の本物をまとめて見ることが出来たから。そして、バードウォッチングをしていて、鳥もよい見え方とよくない見え方をすることがあるが、山雪の花鳥画はそのよい見え方の延長線上、はるか彼方に存在するものだから。絵画の中のカワセミやツルをしっかり記憶に刻みつけて、十二分以上満足した。関係者の方のご尽力に感謝するのみ。

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写真は三本杉と寺谷川。

[写真撮影 : 2013/05 - 京都府] [photo data : 05/2013 - Kyoto Pref.]
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