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[這いずり日記] 長野方面 2014/冬その3

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大雪で閉じこめられた、いつもの避難小屋のいつもと違う一週間。


当初は三泊くらいで帰る予定だったが、例の大雪で帰るに帰れなく、というか小屋から出るに出られなくなり、結局七泊という最長不倒記録を更新した。雪が降る前に帰るという選択肢もあったのだが、ここは悪い状況も体験しておこう、と敢えて滞在を選んだもの。その意味では、収穫は多かった。

さすがに一晩に1.2m くらい積もると、色々と打つ手がなくなる。扉を開けて雪原に出ると、腰から胸、場所によって首までのラッセルとなって体力を使う。雪が積もると、交通が遮断されて、行動の自由が奪われる。それをどのように解消し、また解消してもらうのか。あるいはどのように雪は積もり、また崩れるのか。貴重なノウハウを得た。

ともあれ気分は昔の冬山山行だ。そう言えば昔こんなことをしたなぁ、冬山にはタワシを持っていってたなぁ、などとひとつひとつ思い出し、なんだか得をしたような気になる。山岳部の合宿も、僕のいた頃は軍隊式みたいのが残っていて、決していい思い出ばかりではないが、生活スキルというか、生存スキルのようなものは確かに身に付ている。プラスも多い。

驚いたのは、積雪後、鹿の行動パターンが全く変わったことだ。前週の45cm の積雪後、鹿達は電気柵へ向かう鹿道を放擲し、川のそば、家の近くなどに活動域を変更した。小屋から300mほどの木の陰にねぐらも発見。いわばスクランブル状態なのかも知れないが、昼間から活発に活動し、頻繁に観察できた。脚が四本あるだけあって、雪の急斜面もそれなりにこなす。

人の近くに来るのは獣だけではない。乏しくなった餌を求めて、キクイタダキツグミ、ジョウビタキ、ヒガラ、ベニマシコなど、僕が閉じこめられた小屋から間近に見ることが出来た。一方、シジュウカラには厳しい雪だったようで、明らかに数を減じていた。積雪後二日は全く見ず、三日目になってようやくひとつがい。

最終日、車で山を下っていくと、除雪の終わった道路脇を狙って、ツグミやホオジロが普段ならあり得ない近さで待機している。おっす、と挨拶すると、困惑したような顔をしつつ、それでも待機姿勢は崩さない。人は怖いが、餌がないのだからしょうがない、という割り切りが愉快だった。

写真は物置へと向かう自らのラッセル跡。雪が上がった翌日の朝日。

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[写真撮影 : 2014/02 - 長野県] [photo data : 02/2014 - Nagano]
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