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[更新情報] スリナムの鳥 その10 (アラパウその3、パート3/3)

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少し間が空いてしまったが、スリナム・アラパウの鳥の更新の三回目。これで今回の旅のハイライト、アラパウ篇は終わり。前回の続き。

最初に更新リスト。今回はタイランチョウツバメフウキンチョウあたりが中心。

Red-fan Parrot, Scarlet Macaw, Black-collared Swallow, Brown-chested Martin, Grey-breasted Martin, Purple Martin, White-banded Swallow, White-winged Swallow, White-throated Toucan, Guianan Trogon, Blue-grey Tanager, Palm Tanager, Purple Honeycreeper, Red-capped Cardinal, Silver-beaked Tanager, Slate-colored Grosbeak, Turquoise Tanager, Black-tailed Tityra, Drab Water-tyrant, Rusty-margined Flycatcher, Screaming Piha, Spangled Cotinga, Tropical Kingbird, Mcconnell's Flycatcher, Short-crested Flycatcher, Yellow-rumped Cacique.

和名だと、ヒオウギインコ, コンゴウインコ, ハジロミドリツバメ, クロオビツバメ, ムラサキツバメ, ハイムネムラサキツバメ, チャムネツバメ, シロオビツバメ, シロムネオオハシ, ヒメキヌバネドリ, ノドグロコウカンチョウ, トルコイシフウキンチョウ, ソライロフウキンチョウ, ギンバシベニフウキンチョウ, ムラサキミツドリ, ノドジロクロイカル, ヤシフウキンチョウ, スナイロヒタキタイランチョウ, ソライロカザリドリ, オリーブタイランチョウ, ムジカザリドリ, ハグロドリ, キバラヒタキモドキ, ハシグロオオヒタキモドキ, ムジオリーブハエトリ。




で、四年を経てだいぶ忘れてしまったのだけれど、もっと時間が経つときっともっと忘れるだろうから、現時点で思い出すことを少し書いておく。わんわん泣かれた話であるとか、飛行機の中の出来事であるとか、いろいろ書き足りないこともあるが、まぁそれはともかく。

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五日間の日程を終えて、アラパウ最終日の深夜。気配に気付いて目覚めると、隣の寝台から、ため息や寝返りの音がする。いつもは異常に寝つきのよい理事だから、何か不調か、虫でもいるのか。

どした?

と聞くと、押し潰したような、せっぱ詰まったような嗄れた声を出して、私たちはもう帰れない、ここで死ぬのだ。とか言い出したので吃驚した。パニクっているらしい。

座礁のショックさめやらぬ二日目、夕飯の時に、些細なきっかけで号泣したのにも吃驚した(大の大人が、わーーーーん、わーーーーんと絶叫するように泣いたのは初めて聞いた。反響が密林にゎーーーっ、ゎーーーっ、とこだまして消えて行った)が、その後、鳥を見て、釣りをして、滝で水浴びをして、それなりに楽しそうにしていたのだから、てっきり復調したのかと思っていたのだ。

理由を聞くと、要は
飛行場まで帰り着かないと思っていることが判った。曰く、カヌーはせいぜい6人乗りなのに、私たちは四人。前と後ろ、デニとネピのインディオ二人は操船にぜったい必要だから、定員ギリギリ。荷物を積んだら、もう沈んじゃう。

そのくらい積めるさ。バカだなあ。

上りなのにもう燃料がギリギリしかないのよ。行きだって二往復して荷物と人を分けて運んだじゃないの。

まぁそれはそうだ。だから飛行場のあるアマトポまでひと息に行かないとね。

行きは大人五人と子供四人、下りなのに座礁したのよ。昨日鳥を見に行った時だって、荷物がなくても段々水が入って、沈む寸前だったじゃない。六人と荷物を積んで二時間なんて持つわけがない。だいたい、そんなに沈んだ船で、あの座礁した瀬をどうやって越えられるのよ!

連中はここで生まれて川で生活してるプロだぜ。できないことやるわけない。

そうよ、だから座礁して、私たちだけおぼれ死ぬんだわ!それでピラニアに食べられるんだ!

もう収拾がつかないので、大丈夫、大丈夫、ばっかだなあ。と寝かしつけるべく戦略を変更した。幸い疲れているので、しばらくして寝ついてくれた。しかしそこでひっかかるのだなあ。僕などは、アマトポから先のおんぼろセスナ二時間の方がずっと怖いんだがなあ。

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さて翌日。朝のバードウォッチングを済ませて、荷物を持って岸辺に行くと、でっかい船外機が置いてある。うん、これは知ってる。調子が悪い奴だ。その横にはやはりでっかい発電機が。英語のわかるコック(名前忘れた)に聞く。ねえこれ積むの?うん積むって(にっこり)。えーマジ?六人プラス荷物プラス船外機と発電機かぁ。だいたい、俺らの荷物入れたら座るスペースないじゃないもう。

やがて岸辺にやってきた理事は船外機と発電機を見て顔面蒼白である。ただ、乗らない!という選択肢もないので、死刑囚のようにうなだれて乗り込む。スペースがないので、順番が大事だ。機械類を載せ、僕たちを順に四人乗せ、僕らの荷物を積み上げた。僕は振り返り、岸辺に立っていたコックに手を上げて、じゃあありがとな!と挨拶をする。

と、コックは「何言ってんだお前?」みたいな顔をして、自分のバックパックを背負い乗り込んでくるではないか。えーコック(とバックパック)も乗るの?このカヌーに七人プラス荷物(とバックパック)プラス船外機と発電機 !? さすがにちょっと僕まで動揺してくる。

と、今度は、ニコニコとそれを見ていたデニの若奥さんマコが、赤ちゃんを抱きかかえたまま、私たちもー、と乗り込んでくるではないか。まさかの八人プラス赤ちゃんプラス荷物プラスバックパックプラス船外機と発電機! そうか、全員と金目のものぜんぶ撤収なんだ(笑)!もうどうにでもなれー

「なぁ、こんなもんだって」笑いながら、心でそう言って振り返ると理事はひきつった顔で、それでもわらっていた。その時何を考えていたのかは、聞いていないのでわからない。

もう船上に座る場所はないから、デニはじゃぶじゃぶと川に入って、へさきにぴょん、と飛び乗る。ネピは船尾、船外機の横のヘリに腰掛けた。空を見上げると、宇宙まで見えるような青い空に、白い雲がたくさん浮かんでいる。ヴルルルル、とエンジンがかかってさぁ出発。さようならアラパウ。

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↑これはバードウォッチングに出かけるところ。五人、荷物なし。

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↑上の二枚は、天国のように美しかったマスキタクリキ。(今ならもうこれがモスキートクリークだとわかる)

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↑左から、マコ、理事、ナヴィータ。

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↑理事のトラウマの瀬。

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ああそうだ、帰りのカヌーで、その宇宙まで突き抜けているような空を眺めながら Iris Dement を聞いていたら、最高だった。ど演歌みたいな歌い声が風景にマッチして、とても沁みた。
次回は、おんぼろセスナで帰り着いたパラマリボ篇。二回くらいかな、それでスリナムの鳥は終わりとなる。


[写真撮影 : 2017/08-9 - スリナム・アラパウ] [photo data : 08-09/2017 - Arapahu, Suriname]



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